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京都地方裁判所 昭和44年(ワ)1144号 判決

原告

京都府共済農業協同組合連合会

代理人

松本保三

被告

松谷勝

主文

原告が別紙目録第二記載の債券の権利者であることを確認する。

被告は原告に対し右債券を引渡せ。

訴訟費用は被告の負担とする。

本判決第二項は仮に執行しうる。

事実《省略》

理由

原告主張事実のうち下記(一)、(二)の事実は、被告の認めるところである。

(一)、原告は、昭和三八年九月二六日、訴外丸三証券株式会社大阪支店から、別紙目録第一記載の電信電話債券(本件旧債券)を買受け、同月三〇日、訴外三井信託銀行京都支店へ、これを預けた(保護預け)。

(二)、被告は、広島簡易裁判所に対し、本件旧債券を遺失したことを理由とする公示催告の申立および除権判決の申立をなし、昭和四二年一一月二日、同裁判所から、公示催告の決定を受け、昭和四三年七月九日、同裁判所から、本件旧債券の無効を宣言する除権判決を受け、昭和四三年九月一二日、右除権判決にもとづき、日本電信電話公社から、再発行の別紙目録第二記載の電信電話債券(本件新債券)の交付を受けた。

上記事実によれば、被告が本件旧債券を遺失したとしても、原告が本件旧債券を取得するにつき悪意又は重大な過失があつたことの主張・立証がないから、原告は、本件除権判決前に、本件旧債券を善意取得したものと認めうる(商法第五一九条、小切手法第二一条)。

第三者が喪失証券を善意取得した後、除権判決があつた場合、所定期間内に権利の届出および証券の提出をしなかつた右第三者は、除権判決の効果としてその実質的権利を失わない、と解するのが相当である。けだし、証券に関する除権判決の効果は、右判決以後証券を無効として、申立人に証券を所持すると同一の地位を回復させるに止まるものであつて(最高裁判所昭和二九年二月一九日第二小法廷判決、民集八巻二号五二三頁)、第三者の証券取得の原因が承継取得であるか善意取得であるかによつて、除権判決の効果を異別に解すべき理由がないからである。「証券喪失後、第三者による善意取得によつて失われた権利についてのみは、除権判決によつて、これを善意取得者から奪い、申立人にふたたび与えられる。」とする見解は採用しえない。

したがつて、本件旧債券を善意取得した原告が、本件除権判決にもとづき再発行された本件新債券の権利者である。

よつて、原告が本件新債券の権利者であることの確認および本件新債券の引渡を求める原告の本訴請求を正当として認容し、民事訴訟法第八九条第一九六条を適用し、主文のとおり判決する。

(小西勝)

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